2021年に読んだ本 私的ベスト10

もうすぐ2022年も折り返しなので2021年に読んだ本ベスト10を挙げる

こういうのは1月とかに上げておくべきエントリだって知ってる。
知ってる……。

2021年をまとめたエントリでもちょっと書いたんですけど、去年はTwitterの読書用アカウントをしっかり動かしていました。
そこで相互フォローになる方に海外文学を好きな方が多くて、そんなみなさんの影響で、たぶんこれまでの5倍くらいの比率で海外文学も読むように。

これが、“2021年の”というくくりじゃなく、これまでの何十年の読書人生において自分の中でけっこう大きな出来事になったかな、と思ってます。
名作と言われるような海外文学ってまったく通ってこなかった人間なので、今後はそのあたりもしっかり読んでいきたいなー……。

なんていうお気持ち表明からの、2021年の私的ベスト10です。
なお、順位は特にないです。
どれも大優勝ってかんじなので……!

作品紹介の引用も載せるので、ここから先はけっこう長くなります。
なので、まず先に画像にまとめたものを載せちゃうね!ドン!!!

2021年に読んだ本 私的ベスト10

というわけで、それぞれに対しての詳しい感想を綴っていきまーーーす。

 

赤い魚の夫婦

初めての子の出産を迎えるパリの夫婦と真っ赤な観賞魚ベタ、メキシコシティの閑静な住宅街の伯母の家に預けられた少年とゴキブリ、飼っている牝猫と時を同じくして妊娠する女子学生、不倫関係に陥った二人のバイオリニストと菌類、パリ在住の中国生まれの劇作家と蛇……。

メキシコシティ、パリ、コペンハーゲンを舞台に、夫婦、親になること、社会格差、妊娠、浮気などをめぐる登場人物たちの微細な心の揺れや、理性や意識の鎧の下にある密やかな部分が、人間とともにいる生き物を介してあぶりだされる。

Amazon – 赤い魚の夫婦 | グアダルーペ・ネッテル, 宇野和美 |本 | 通販

Twitterきっかけで読んだ作品のひとつ。メキシコ文学。
相互フォローさんが『闘魚のベタが出てくる』という情報とともに感想をあげていたので。

私、ベタが大好きなんですよね……。飼ってないけど……。飼えないけど……。
ただ、俺的加算ポイントの“ベタが出てくる”というのを差し引いても、読書好きに推したい一冊であります。
『本当に海外文学なのか?』と思うほど、行間に含まれる感情が繊細で不穏。
ちょっと小川洋子さんの作品っぽさがある。
おそらく、この本は翻訳もめちゃくちゃ良いんだと思います……。

 

藁の王

あの森に入れば人は王になれる。だがその後、殺される――それは小説の森。 小説としてデビューしたものの著書は一冊だけ、しかも絶版。そんな私が大学で創作を教えることになった。だが自身の執筆は行き詰まり、教え子たちも苦悩し隘路へとはまり込んでいく。その暗闇を、私もかつて学生時代に彷徨っていた。その中で直面する問い、なぜ私たちは小説を志すのか――自身の経験を元に、文学の迷宮、小説の樹海を彷徨う人々を描いた表題作を始めとした渾身の作品集。

Amazon.co.jp – 藁の王 | 谷崎 由依 |本 | 通販

長らく『読みたいリスト』に入れていたものを長期休暇(GW)を利用して読んでみたらめちゃくちゃ良かったし、余韻にもがっつり浸れたという。
ただ、この本の何がいいかっていうのは私はうまく言語化できなくて。
とにかく心の深い部分にじんわり入り込まれた感じの作品でした。
胸がざわつく読後感。でも嫌なざわつきではないという不思議な感じ。

 

スモールワールズ

夫婦円満を装う主婦と、家庭に恵まれない少年。「秘密」を抱えて出戻ってきた姉とふたたび暮らす高校生の弟。初孫の誕生に喜ぶ祖母と娘家族。人知れず手紙を交わしつづける男と女。向き合うことができなかった父と子。大切なことを言えないまま別れてしまった先輩と後輩。誰かの悲しみに寄り添いながら、愛おしい喜怒哀楽を描き尽くす連作集。

スモールワールズ | 一穂ミチ | 日本の小説・文芸 | Kindleストア | Amazon

おそらく2021年の私の読書アカウントのほうのTLにいちばん流れてきた本。
そりゃ〜、気になって読んでみるよね。

で、読んでみたらTLでの高い遭遇率にも納得したよね。

連作短編集だけどバラエティ豊かだなぁ、という印象の一冊。
一穂ミチさん、どんな小説でも書けそうだなー、と思いました。
好きなのは「ピクニック」。最後の凄さ。
そして「式日」。これを読んでほっとして救われる被虐待児がいるんじゃないかな。私はそうだった。

  

きみはいい子

夕方五時までは家に帰らせてもらえないこども。 娘に手を上げてしまう母親。 求めていた、たったひとつのもの――。 怖かったのも、触れたかったのも、おかあさんの手だった。

きみはいい子 | 中脇初枝 | 日本の小説・文芸 | Kindleストア | Amazon

いま、作品紹介の引用のためにコピペしただけで涙ぐんでしまったほどに私の涙腺をゆるゆるにしてしまう作品。
どれも被虐待児の話です。
虐待経験者には読み進めるのがきついとは思うけど、手にとってほしい一冊。

これ以上の感想は書けねえ〜〜〜。だらだら泣いてしまうから書けねえ〜〜〜。

 

夏への扉

ぼくの飼い猫のピートは、冬になるときまって「夏への扉」を探しはじめる。家にあるドアのどれかひとつが、夏に通じていると固く信じているのだ。そして1970年12月、ぼくもまた「夏への扉」を探していた。親友と恋人に裏切られ、技術者の命である発明までだましとられてしまったからだ。さらに、冷凍睡眠で30年後の2000年へと送りこまれたぼくは、失ったものを取り戻すことができるのか──新版でおくる、永遠の名作。

夏への扉〔新版〕 (ハヤカワ文庫SF) | ロバート A ハインライン, 福島 正実 | 英米の小説・文芸 | Kindleストア | Amazon

タイムマシンものです。
でもタイムマシンがなかなか出てこなくて、『私は本当にタイムマシンものを読んでいるのか……?』という気持ちになったけど、中盤からはぐいぐい乗っていくので安心してください。

最後のオチの、とある要素だけは賛否があるかと思いますが(私もどちらかというと否寄り)新版なせいか読みやすかったし、面白かったのでベスト10に入れました!

 

紙の動物園

ぼくの母さんは中国人だった。母さんがクリスマス・ギフトの包装紙をつかって作ってくれる折り紙の虎や水牛は、みな命を吹きこまれて生き生きと動いていた……。ヒューゴー賞/ネビュラ賞/世界幻想文学大賞という史上初の3冠に輝いた表題作ほか、地球へと小惑星が迫り来る日々を宇宙船の日本人乗組員が穏やかに回顧するヒューゴー賞受賞作「もののあはれ」、中国の片隅の村で出会った妖狐の娘と妖怪退治師の「ぼく」との触れあいを描く「良い狩りを」など、怜悧な知性と優しい眼差しが交差する全15篇を収録した、テッド・チャンに続く現代アメリカSFの新鋭がおくる短篇集

紙の動物園 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ) | ケン リュウ, 古沢 嘉通 | 英米の小説・文芸 | Kindleストア | Amazon

2021年の夏頃に、芳根京子ちゃんが主演の「アーク」という映画が公開されまして。
映像、物語ともに私好みだろうな……という直感があって観に行ったのですけども、その時に『原作を履修しておくか〜』という軽い気持ちで読んだのがきっかけ。

そしたらめちゃくちゃ良かった……。

SFなのに、いわゆる『エモさ』があるというか。感情の乗せかたが凄い。
個人的には、映画の原作となった「円弧」と、『これまじで英語で書かれてたの???』と思わせられた「もののあはれ」が好きです。
あと、映画もやっぱりすごく私好みでした。

 

ユリゴコロ

ある一家で見つかった「ユリゴコロ」と題されたノート。それは殺人に取り憑かれた人間の生々しい告白文だった。この一家の過去にいったい何があったのか? 絶望的な暗黒の世界から一転、深い愛へと辿り着くラストまで、ページを繰る手が止まらない衝撃の恋愛ミステリー!

ユリゴコロ (双葉文庫) | 沼田まほかる | 日本の小説・文芸 | Kindleストア | Amazon

読む前からこの本のことはタイトルだけ知っていて、『どろっどろの百合小説なのかな〜』と思ってたんです。
まさかこんな内容だなんて……。

引用しているあらすじの通り、“殺人にとりつかれた人間の生々しい告白”を記したノートを主人公が見つけるわけですが、この告白文の面白さが半端ない。
読むのを中断できず、夕飯準備を夫に丸投げしてまで読み続けて、数時間で読了した記憶があります。
最後に知らされる真実もすごいところからパスが来て、思わず声が出ましたね……。

 

ザリガニの鳴くところ

ノースカロライナ州の湿地で男の死体が発見された。人々は「湿地の少女」に疑いの目を向ける。6歳で家族に見捨てられたときから、カイアはたったひとりで生きなければならなかった。読み書きを教えてくれた少年テイトに恋心を抱くが、彼は大学進学のため彼女を置いて去ってゆく。以来、村の人々に「湿地の少女」と呼ばれ蔑まれながらも、彼女は生き物が自然のままに生きる「ザリガニの鳴くところ」へと思いをはせて静かに暮らしていた。しかしあるとき、村の裕福な青年チェイスが彼女に近づく……みずみずしい自然に抱かれた少女の人生が不審死事件と交錯するとき、物語は予想を超える結末へ──。

ザリガニの鳴くところ | ディーリア・オーエンズ, 友廣 純 | 英米の小説・文芸 | Kindleストア | Amazon

殺人事件なのか、それともただの事故なのか……どちらなのかよく分からない死体が発見されたことから、なんらかの関係があると思われる“湿地に住む少女”の生い立ちが語られていく、という構成。

正直、長い。
でもこの長さじゃなかったら語れない話。
死体に関しては最後にケリがつくんですけど、そこに至る頃には死体のことはわりとどうでもよくなっているところがあるかな……。
人生の追体験みたいな一冊だから、ある程度の気力がないと読了までできないような気もします。気をつけて!

 

赤いモレスキンの女

男はバッグの落とし主に恋をした。手がかりは赤い手帳とモディアノのサイン本。パリの書店主ローランが道端で女物のバッグを拾った。中身はパトリック・モディアノのサイン本と香水瓶、クリーニング屋の伝票と、文章が綴られた赤い手帳。バツイチ男のローランは女が書き綴った魅惑的な世界に魅せられ、わずかな手がかりを頼りに落とし主を探し始める。

赤いモレスキンの女 (新潮クレスト・ブックス) | Laurain,Antoine, ローラン,アントワーヌ, 洋之, 吉田 |本 | 通販 | Amazon

タイトルがミステリーっぽいでしょ?
でもこれ、大人な恋愛小説なんですよ〜〜〜。

もっとそれっぽいタイトルにしてほしかった!!!!!

パリっぽさはありつつ、情熱的にもなりすぎない(状況的にそれはそう)ある種の淡々とした雰囲気が私には合ってました。
「ナタリー」に似た感じがあるから、どちらかの作品が好きなひとは、もう一方も気にいると思う。
これも個人的にはお薦めの一冊。

  

パリのガイドブックで東京の町を闊歩する

正しい言葉なら、これほど長く考えつづけることはなかっただろう。

「パリのガイドブックで東京の町を闊歩する」

突然、啓示のように降ってきた言葉を口ずさむ「私」はそんなことが果たしてできるのだろうかと考えながら、住みなれたはずの東京の町を歩きはじめる。表参道へ、荻窪へ、そして神保町へ。パリのガイドブックを手にした「私」はどこにたどり着くのか。第1号は2018年の夏、炎天下の東京を歩いた記録です。

Amazon – パリのガイドブックで東京の町を闊歩する: まだ歩きださない (1) | とん, 友田 |本 | 通販

タイトルだけ見ると、デイリーポータルzっぽいものを連想するんですけど、そうじゃなくて、もっと哲学的な記録というかなんというか。
パリに思いを馳せることにより東京の見え方も変わってくる……っていう不思議なエッセイです。

読むとタイトルが少しだけ腹落ちする。
腹落ちが『少しだけ』なのは、著者自身も“パリのガイドブックで東京の町を闊歩する”ということの意味を模索中なんだろうな、と思うから。

 

以上!
私的2021年のベスト10でした!
ちなみに2021年に読んだ冊数は99冊。惜しくも3桁に届かなかった〜。

今年は去年よりも読書ペースが落ちているので、年内に50冊読了までいけるのかもちょっと怪しい……けども、面白い本にはコンスタントに出会えている感はある!
これもすべて読書アカウントのおかげなんだろうな、と。
読書好きなひとはTwitterで読書アカウントを作るのお薦めですよ、本当に。