秋の夜長にお薦めの、優しい読後感を味わえる小説5選

こういうエントリを書いてみたくて!
でも世の読書家さんに比べたら、自分が読んできた量なんて浅すぎるとも思っていて!
でもでもそんなふうに考えてたらいつまで経ってもこういうエントリ書けないよな…と思ったから、書くことにしました!!!
人生、やったもん勝ちだよ!!!!!

 

 

 

…というわけで、ワーキングマザーとして忙しい日々を送りつつも(こういうことを自分で言っちゃうタイプ)1年に120冊程度の本を読む私が、秋の夜長にお薦めの本をつらつらと紹介していこうと思います。
ちなみに、このエントリのためにぜんぶ再読しました。再読しても、やっぱりぜんぶすごく良かった。
再読にかかった時間をもとに、私的読了目安も書いたので参考にしてくださいね!!!
一晩=2時間くらいだと換算してください!!!

 

 

この下巻は、他人の目がある場所では絶対に読まないでください

私は車内で読んでいて、再読にも関わらず落涙と鼻水を止めることができませんでした。
繊細で綿密な伏線回収はさすが辻村作品だと思わずにはいられません。
上巻では伏線をはりまくるため冗長な部分もあり、正直そこは再読でもつらかったです。初読のときも、たしか上巻読破には下巻の3倍くらいの時間がかかってたんですよね。下巻のほうがボリュームあるのに。
しかし、そうやって丁寧に描かれた上巻があってこその下巻での『あ、これはこういうことだったのか!』『だからああ言ったのか!』と分かっていく事実と、そのときの登場人物たちの感情を推測するのが本当に幸せで楽しいです。
小説はフィクションである。
そう分かっていても、この小説を読むと、『ここに出てくるみんなが実在してほしい。そして、これが実際に起こったことであって欲しい』と思わずにはいられません。
そしてラストシーンのセンスの良さ!
傑作ですね。

読了目安:7晩(下巻の後半に入ってからはページをめくる速度は上がるかと思われます。)

 

 

「本当に欲しいものは手に入らない。それが人生なんです」

高校教師のこの言葉から始まる、5篇の連作+αで構成された朝比奈あすかさんの「彼女のしあわせ」。
初読のきっかけは、たしかダヴィンチの新刊コーナーを読み流していたときにタイトルと表紙が気になったからだったんです。出産直後くらいの時期で、ものすごく活字に飢えていて、だから朝比奈さんのことは全く知らなかったんですけど、とりあえず読んでみたんですよね。
そしたら、ものすごい当たりの一冊だったという。
3姉妹とその母親のそれぞれの視点で語られる短編集で、キャリアウーマンの道を邁進する長女、地方でブログに没頭する子持ち主婦の次女、子どもを産めない三女、退職した夫との関係に悩む母親…とそれぞれ環境も悩みも違う4人の感情が、丁寧に描かれています。
初読でも、今回の再読でも、自分がいちばん理解しやすかったのはやっぱり次女でしたねぇ…。
ただ、三女の感情もとても良く分かったし、好きです。
どの話においても、大きな事件は起こらない。そのぶん、感情描写の細かさ、上手さでひっぱられている一冊かなぁ、と思います。女性だったらどこかしら共感できるのではないかと。悩みの内容的に男性には積極的におすすめはしないかな…。
登場人物のひとりが冒頭の言葉に新しい解釈を見つけるラストは、私はとても好きです。

読了目安:3晩(短編集だからさくさく読めます。)

私が『好き!』って思った表紙は、単行本のこちら↓でした。

 

 

 

誘眠本

秋の夜長、つまり眠れない夜に読む本としてお薦めするのは微妙かなぁ…と思ってしまうのがこの「オテル モル」です。
悪夢にうなされてしまったり、不眠に悩むひとに快眠を提供するために作られたオテル・ド・モル・ドルモン・ビアン。このホテルに複雑な家庭の事情から無職だった主人公が、『誘眠顔だから』という理由でこのホテルに採用されたことから物語が始まります。
もともと栗田さんの文章って、なんとなくふわふわっとしてて優しい印象なんですけど、今作ではその内容のせいか更に柔らかくて心地良いものになっていると感じました。眠りに抗えない主人公の描写なんかは、自分も眠りを誘われてしまいます。
だから、小説としてのボリュームはそれほどないんですけど、細切れで読むことで読了までに時間がかかってしまうかんじはあるかも?
柔らかい文章の裏側で、実はけっこうえぐい事情が描かれているのもちょっと凄いな、と思います。

読了目安:4晩(ボリュームはそれほどあるわけじゃないんですけども…。)

 

 

彼の身長は2メートル67センチ

20年近く前に発売されて、現在はどうやら絶盤になっているっぽい本です。しかし幸か不幸かAmazonで古本が1円から買えてしまうという…。
初めて読んだのはJKの頃ですね。当時、家に居場所がなかった私は田町駅近くにある三田図書館というところに入り浸っていまして。そこの新刊本コーナーで見つけて、なんとなく借りた…っていうのがファーストコンタクトですね。三田図書館には本当にお世話になりました。大好きな場所でした。今もあるのかなー。
…で、この本はそこから5回くらいは再読してるんじゃないかな…。劇的にではないけど、自分の人生で大事な一冊になっている本の中のひとつではないかなぁ、と思います。
主人公が出会う猫田研一。彼は2メートル67センチの大きさながら、まだ成長は止まらない。そんな彼が成長していく時の出来事が語られることによって、主人公たちにも変化が起きて…というお話。
基本的に女性作家しか読まない私が、例外的に著作をほぼ制覇してしまっている男性作家が、この薄井ゆうじさんですね。力みすぎていなくて、ふっと笑ってしまうような文章や展開がとても好きです。
この小説はラストも秀逸。『この終わりかたなのか!』っていう、優しい衝撃があります。

読了目安:5晩(むしろもっと時間をかけて読んでほしいと思う一冊です。)

 

 

迷わず行けよ。行けば分かるさ。

もともと西加奈子さんは好きな作家さんだったんですが、それを『大好き!』にまでしたのがこの小説です。
ちなみに対として「こうふく あかの」というのも出ていますが、こちらはそれほどでもなく…。「こうふく みどりの」だけでも成立していてじゅうぶん楽しんで読めるので、こちらだけお薦めします。
みどりを主人公としたお話と、主人公が誰か分からないお話のふたつがメインで並行して展開していく構成。
どちらも終始、関西弁での語り口なので標準語に慣れていると実は少し読みづらい。でも、これは関西弁で語られないとだめだなー、とも思います。関西弁での下世話で、それでもあたたかいかんじが全編にあります。
そんなあたたかさの中でドキドキしながらみどりちゃんの初恋を見守っていると、予想外の展開や事実が見えてきて、ストーリーテラーとしての西加奈子さんの上手さを感じます。
主人公が誰か分からない話は、実は途中で2度ほど主人公が変わっていたりするわけですが、そのうちのひとつで『大好きな相手とあと何回できるのかな』と考える話がすごく好きです。その主人公が誰だったのか分かったところで、うわぁ…ってものすごく切なくなります。

読了目安:3晩(関西弁に抵抗がなければこの程度。慣れがなければ5晩くらい?)

個人的には単行本のこっち↓の表紙のほうが好きです。「ノルウェイの森」っぽいよね。

 

 

こんなセレクトになりました☆ミ
このエントリを見て、『あ、気になる…』と思ってくれたアナタ!
『本でも読もうかな…』と思ってくれたアナタ!
実際にこの5冊のどれかを手に取ってくれたアナタ!
皆様に素敵な秋の読書ライフが訪れることをお祈りしています!!!!!

 

 

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